Rider's high - 第11章

とうとう火曜日、もう帰らなければ。休みは水曜日までだ。今日は昼まで家でゆっくり過ごす。あいにく天気も曇りがちだ。
「昼なに食う?」
「お好み焼きでも食いますか?」
「いいねー」

近くのお好み焼き「柿の葉」に入り、とりあえずビール。
すると、マツからケータイが入った。
「ふぁんきーさん、マツとミキオが今から来るって」

しばらくして二人が到着した。結局4人でお好み焼きを食い、その後、タカシくんの家で軽く一杯。

軽く話しして、また酒も飲んで。
1時間くらいくつろいだ後、用事があるからと、2人は帰った。

「おー、よしもとー、精密ドライバーあるか?」
「な、なにするんすか?」
「壊れたケータイ借りたから、分解してみる」

壊れたモノを見ると、とりあえず分解したくなる。ケータイを分解する機会なんて滅多にないし。ケースを外し、基盤を見ると、塩が粉を吹いていた。きれいに掃除すると電源だけは入った。これならメモリーを読み出せる。
「やったぞ、おい、・・・ん?」
タカシくんはヨダレまみれで爆睡中だった。

不意にケータイが震えた。
「せんぱい、うちのケータイ持ってる?」
「おー、電源入るようになったから、もうちょっと待ってよ、で、オレ今日帰るかもしれんから、もしオレに電話して出なかったら酔っぱらいに電話してよ」
「うん、わかったー」

一服をしてTVの天気予報を見る。明日は雨らしい。さあ、そろそろ帰り支度をしないと。爆睡中のタカシくんを起こさないように、荷物をまとめる。この家ともとうとうお別れだ。

寝袋、テント、バッグを玄関の外へ出す。
「なっ、なにしてんすか?」
物音でタカシくんが起きてきた。
「おお、帰る準備。いつでも帰れるようにな」
「そんなん、こんなところに荷物出しといたら、おふくろびっくりしますよ。とりあえず中入れてください。」
「そ、そうか。」

しばらくすると、タカシくんのケータイが鳴った。
「おー、ワタかー、なに?外??」
「どーした?」
「なんかおもろいもん見れるからベランダ出てみーって」

ベランダへ出ると、下の駐車場で誰かが手を振っている。ワタだ。
「なにしとん?」
「耳鼻科で耳みてもろーた。別に用はないけ。今上行く」

再び野郎3人がヨシモト家にそろった。
「先輩まだ居たん?」
「おー、もうそろそろ帰らないとダメなんだけどなー、天気がどーなるか。」
天気は下り坂だ。少しずつ雲が出始めている。

「今日はなにしよった?」
「マツとミキオが来て飯くっただけや」
「晩飯どーするん?どっか食い行こーか」
「ふぁんきーさんどーします?」
「うーん、明日天気悪そうだからなー。今日中に帰ろうかなーと思ってるけど」
「まあ、とりあえず飯食ってからでいーじゃないっすか」

で、結局、最後の晩餐をすることに。

「わし会社帰りだから着替えに帰るわ」
「おー、店入ったら電話するわ」


一休憩してからタカシくんと二人で有楽街をぶらつく。
「ここにしましょうか?」
「うー、なに?魚とか食えるん?」
「色々食えますよ」
づぼらと書かれた看板は、ほんの少しだけ高そうで、でも旨そうな感じがした。

「とりあえず、大ナマ、2つ」
岩国最後のビールだ。
「ウマイねー、やっぱ夏はビールだよ」
「あっ、ワタに電話してみます」

飲んで、食って、で、しばらくしてワタが来た。
「おー、遅かったなー」
「すいませーん、ビール3つ」

女の店員がビールを持ってきた。

「・・・あれー?」
「ん?どーしたん、よしもと?」
「いやっ、あの女、知ってるなー」
「まーた始まった」
「いやっ、マジマジ。あーっ、わかった。水泳部だっ!!」
「水泳部??」
「たぶんそーだ。ぜったいそーだ!」

不意にタカシくんのケータイが鳴った。
「あー、ちょっと待って。ハイ、ふぁんきーさん、ミホちゃんから」

「もしもしー、なにしてるん?」
「あれ?せんぱい?まだいたの?」
「おー、まだいたよ。今みんなで飯くってるとこ。どう?ケータイ取りに来れる?」
「うーん、まだ行けないけー、後で電話するー」

「そーだ、水泳部だ。」
タカシくんはまだ女の店員の話をしている。
「ずっと前にも見たことあるんですよ。どっかの飲み屋で働いてたなー」
「なに、スナックとか?」
「ええ、もっと華やかな印象だったけどなー。なんでこんな所で働いてんだろー」
「きっと店員の男が旦那なんだよ、で、一緒に働いてんだよ。」
「そうそう、きっとその旦那がつまんないヤツで、それに合わせて地味になってんだよ」
「いやー、どーしたんだろー、高校の頃の後輩ですよ。たぶんオレの事知ってると思いますよ」
「じゃあ次来たとき聞いてみ」
「じゃあ、ビール飲もうか!、すんませーん!」

しばらくして、ビールを持って女の店員が来た。
「あのー、すんません、水泳部じゃなかった?」
「は?」
「いや、高校の時水泳部だったでしょ。」
「ええ・・・」
「オレのこと知らない??水泳部の1年上だったんだけど」
「・・・いやー・・・」

・・・確かに水泳部だったが、タカシくんの事は憶えていないらしい。かわいそうに。
「まあ、そんなもんだよ」
「いやっ、知ってるハズなんっすよ。おかしーなー」

しばらくアホな話しで盛り上がる。

「ミホちゃんおそいねー。」
「うーん、電話してみようか?」

「・・・もしもし、ミホちゃん、来れる?もし来れなかったらケータイ預けておくか?」
「ううん、今出ようとしてたとこ。今から行くけー、どこー?」
「づぼらって店」
「でも、もう寝る格好してるけー、店入れないよ?」
「いいよ、明日仕事だろ」

しばらくして、ケータイが入る。店の前まで来たらしい。ワタの壊したケータイを持って、一人で外に出ると、小雨が降っていた。運転席の窓を開け、ミホちゃんが待っていた。


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