Brutus - 第1章

あれは確か、2004年の冬の事だった・・・

「いや〜、あんな初夢、見るかよ、普通・・・」

久々に正月を実家で過ごそうと、横浜でレンタカーを借りて北海道の実家まで走り、家族とマターリ過ごした後、そそくさと帰路についていた。

「あっ、この道ぢゃ墓に寄れないな〜。ま、いいか」

年末に室蘭にある母方の墓参りへ行き、お土産に熱燗とどら焼きを置いてきたんで、カラスに荒らされる前に回収しようと思っていたのだ。しかし、裏道を通ってしまったため、既に虻田まで来てしまっていた。

「ま、仕方ない、墓守に任せるか」

久々の冬の北海道。なんだかんだ言って、夏は毎年来ているが、冬はホントに久しぶりだ。路肩に雪は積もっているが、道路は乾いている。オレが子供の頃は、もっと雪が多かった。たぶん。地球温暖化が進んでいるのを、冬の北海道は教えてくれている。

「さ〜て、この調子だと函館には14時には着くな〜。フェリーも余裕だな」

渋滞なんて存在しない道南の片側2車線の道を、軽快に飛ばしていた。車は地元ナンバーか、東北ナンバー。横浜ナンバーなんて、ここら辺では見ることは少ない。

遥か前方のセブンイレブンから出てきた車が、追い越し車線側に出て、すぐに路肩側に寄った。オレは車線変更する必要も無くそのまま飛ばす。

「はぁ?」
と、突然、その車が中央分離帯の隙間で転回するような動きをし始めた!オレとの距離は30mも無い!
「What the hell are you doing!!!!!」
この距離とスピード、そして舗装路にスタッドレスタイヤでは急ブレーキでも止まれない!
(かわすしかない!!!)
そのまま直進し、中央分離帯を利用してハンドルを右に切る! 対抗車線には車! 
(よっしゃ〜!かわした!!)
助手席の窓から、その車が見えなくなった瞬間、かわしたのを確信した!

ドガシャン!

「マジですか〜っ!!!」

転回しようとした車は、オレの存在には全く気づかず転回を続けていた! リアドアにヒット!!!
リアが右に流れる!!

「コナクソ〜!!」

すかさず軽いブレーキングドリフトで体制を立て直す!
(ダテに走り屋やってたわけぢゃねえぞ!!)

何とか停車し、車を路肩に寄せる。後ろにヤツの車が付ける。

ドアを開け、降り、無言でヤツをにらむ。

「すいません」
「おじさん、ダメだよ〜、オレ走ってるのに路肩から転回しちゃ〜」
「いや、ウィンカー出さなかったっけ?」
「おじさん、そーゆー問題以前の話でしょ。普通のおばはんの運転だったらあんたの車か歩道に突っ込んでるよ!」
「はあ、すみません」
「とりあえず警察呼ぶから」


・・・警察も来て事情聴取。まあ、ヤツが悪いのは警察も認めるわ。

「では、事故証明はね、正月は事故が多いから時間がかかるから・・・」
「じゃ、あとはお互いで話し合って、示談にするか、まあ、保険屋さんどうしの話になるのかな、レンタカーだから」

ほのぼのとした警官は、ほのぼのと帰っていった。

「じゃ、ちょっとレンタカー屋に電話するわ」
「はい、私もちょっと連絡を」

レンタカー屋に事情を説明する。
「・・・はあ、そうですか、それじゃ、営業補償の2万円が必要なんですね」

どうやら修理代は保険屋管轄だが、レンタカーの営業補償で2万円必要らしい。

「おじさん、営業補償で2万円キャッシュで必要なんだけど」
「ああ、じゃあ、これで」

ヤツも自分の過失を素直に認めてるらしい。まあ、町役場の職員らしいから、ゴタゴタなしに終わらせたいんだろ。


「じゃ、おじさんも気をつけてね」
「はい、すいませんでした」


「ふ〜、正月早々・・・、はっ!」
「・・・。」
「・・・そうか、これだったのか・・・。」




(・・・ん?部屋に誰か入ってきた。おおっ?! 強盗?)
(両手を上げて降参しよう。)
(よし、これで命だけは助かった!)
(うっっっっ!!!!)
(なんで刺す〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

・・・1月2日、午前3時、2004年の初夢は、強盗に左わき腹を刺されて終わってんだった・・・。

「助かったと思った瞬間、刺された。かわしたと思った瞬間、刺された。か・・・。」

「初夢は正夢・・・、そうか、じいちゃんばあちゃんが教えてくれてたんだ・・・。」
「・・・っつーか、教えるならもうちょっとリアルに教えて欲しかった・・・。ま、これで済んだならイイか。」


ネタとして取った写真を、terjeとまーぞうに送る。
「速報! 事故った!」

しばらくしてterjeから返信。

「・・・ん?オレも後ろからって・・・、terje、おまえもか・・・・・・。」

やつはケツに突っ込まれたらしい・・・。あーあ。



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